この「講座」は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて連載されているものを、著作者の許可を得てウェブ上に転載したものです。

この「講座」内容に関連する質疑応答は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて受け付けております。

講座内容についてのご質問がある方は、どうぞ、上記会議室においでください。

3.5 トライアル

翻訳会社にアプローチすると、たいていの場合、トライアルというものが送られてきます。これは、1〜2ページくらいの短い文書(または、そのまた一部)を翻訳して提出し、自分の実力を評価してもらうためのものです。翻訳会社ではなく、クライアントと直接取り引きするような場合でも、最初に、短い文書をトライアルとしてやって欲しい、と言われることがよくあります。

自分の実力を正確に図ってもらうため、また、アピールしてのちのちの仕事につなげていくために、いくつか、注意する点があります。

★トライアル分野に注意!

トライアル分野は、通常、複数用意されています。そして、アプローチした翻訳者側が選ぶ場合と、先方が適当に選んで送ってくる場合があります。自分で選ぶ場合にはまず問題は発生しませんが、先方が適当に選んだ場合、自分の不得意分野が来てしまうことがあります。履歴書に、得意分野とやりたいない分野を明記していても、こういうことはあるらしいです。

自分が不得意な分野が送られてきてしまったら、一度、電話でもして、分野を変えて欲しいと頼んでみましょう。基本的には、変更に応じてくれるハズだと思います。ただ、まれには、「その分野の翻訳者が欲しいので、ともかく、送ったトライアルはやって欲しい」と言われることもあるそうです。そういう場合は、まあ、仕方ないからトライしてみるんでしょうね。あまりにデキが悪いなら、返送しないっていう手もあります。

★実際の納品時に近い形態をとる

今どき、納品は、テキストファイルかワープロソフト(Wordや一太郎など)のファイルになります。トライアルも、パソコンに打ち込んで、印刷したものを提出しましょう。間違っても、手書きの原稿なんぞ、送らないように...(今どき、ホント、そんな人、いないとは思いますが^^;)

印刷フォーマットに指定があるときは、それに従います。指定がなければ、訳文が日本語なら、横全角40字(80桁)x縦20行〜30行くらいがいいと思います。これは、トライアルをチェックする人が、赤ペンを入れる場合には、行間を少しあけておいた方がいいからです。英語も、このくらいのイメージになっていればいいでしょう。英語の時の横幅は、もう少しせまくてもいいかもしれません。昔は、60ストロークx22行が標準だったようですから。

★できる限りの努力をする

これは、もう、当然のことですね。トライアルのデキが悪ければ、その先はありません。英語の内容を咀嚼する、専門用語を調べて確認する、自然な日本語に書き直す、ということがちゃんとできれば、トライアルに落ちることはないはずです。

内容の咀嚼と自然な日本語が実現できるかどうかは、その専門分野の実力そのものですから、トライアルの時にあわててもどうしようもありません。普段からの勉強がモノを言う世界です。しかし、専門用語の調査・確認は、やるかやらないか、の世界です。

自動車関係の英日トライアルで、自動車関係の本やパンフレットによく出てくるある単語(自動車ユーザー向けに一般に使われる用語)がでてきました。でも、これに引っかかる人がとっても多いんだそうです。で、この程度の単語がダメなら、文句なしに落とすんだそうです。

★仕事ベースになっても、同レベルの仕上げを

翻訳会社の採用担当諸氏(複数)から、「トライアルのデキはいいのに、実際の仕事を出すとボロボロという人がときどきいる」という嘆きを聞いています。

仕事になると、納期も厳しく、念入りな作業をすることは困難になります。でも、実際の仕事のデキが悪ければ、すぐに仕事は来なくなるのです。トライアルは念入りに、ホンチャンの仕事はそれなりに、では、継続受注は望めません。実際に仕事をするようになったら、毎回がトライアルです。トライアルを受けるときには、こんなことも、ちょっと考えてみてください。

★トライアルの結果について

トライアル結果が出るまで、何ヶ月もかかることもあります。気長に待ってください。これは、各社とも、採用担当者は、他の業務(こっちがその担当者の中心職務)をこなしながら、トライアルの採点を行うのが普通だからです。一生懸命努力して提出したトライアルをほっぽって置かれるのは気分のいいものではありませんが、しかたのないことです。

どうしても気になるなら、電話などで問い合わせてみてもいいでしょう。ただし、あくまでも控えめに。「一生懸命やったのにぃ〜」というような気持ちが言葉ににじまないように気をつけましょう。相手も人間ですから、心証を害することのないよう、気をつける必要があります。

そんなに待つほどヒマじゃないぞ、という人は、その間に次の会社にアプローチしましょう。たいていのフリーランス翻訳者は、複数の翻訳会社に登録しています。駆け出しだろうが、二足だろうが、遠慮することはありません。どんどんアタックしましょう。

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