この「講座」は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて連載されているものを、著作者の許可を得てウェブ上に転載したものです。

この「講座」内容に関連する質疑応答は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて受け付けております。

講座内容についてのご質問がある方は、どうぞ、上記会議室においでください。

3.6 登録

トライアルに合格すると、「登録」です。各翻訳会社の登録翻訳者の束に、あなたのことを書いた紙が1枚、追加されるわけです。コーディネーターさんが仕事を振る相手をさがしてパラパラめくっているときに、あなたの登録用紙が目に留まれば、晴れて仕事の打診がくる、というわけですね。

登録手続きは、翻訳会社によって異なります。

一番多いパターンは、送られてきた登録用紙に必要事項を記入して返送する、というものでしょう。面接します、という翻訳会社もあります。私は、面接なしのところでも、登録手続きを兼ねて訪問します、と言って行ってしまいます。ホンネは、敵情視察を兼ねて、なんですが(^^;)

面接では、登録用紙に記載する内容を面接しながら決めていく、ということが多いと思います。特に、分野とレートは、できれば、双方で話をしながら書き込んでおいた方が、なにかといいだろうと私は思います。あと、面接により、性格や人間性などを知りたいと思っている翻訳会社もあるかもしれません。

登録用紙の内容は、名前や住所など、「履歴書に書いてあるから分かってるだろうがぁ」と思ってしまう内容も多いのですが、これはまあ、しかたがないでしょう。履歴書から登録用紙への転記も、たくさんになると大変ですからね。

★得意分野や専門分野

特に、はじめて仕事をする人などの場合、得意分野や専門分野を聞かれても、どう答えていいのか困ってしまう人もいるでしょう。でも、これは必ず聞かれる(記入する)項目ですから、予め、答えを考えておきましょう。ホントは、トライアルを受ける前に考えておかなきゃならないことなんですが...

ともかく、得意分野など、聞かれたことは、「○○です」と言い切っちゃいましょう。

「いや〜、私、これから仕事を始めるわけでぇ... まだ、実際の仕事としてやったわけじゃありませんしぃ... 一応、○○をやりたいとは思ってるんですがぁ...でもぉ... 」なんてやられちゃったら、面接している方は、「アンタにどういう分野の仕事を振ったらいいのか分かんないだろぅがぁ。もう知らん!」と思っちゃいます。

こういう項目は、「得意分野や専門分野(としてやっていこうと心に決めている分野)は何ですか?」と聞かれたと思いましょう。その他にも、これからのことを聞かれたときには、みんな、「どうしたいと思っているのか」を聞かれたと思ってはっきり答えるのがいいと思います。

郵送の場合も、空欄にしないで、必ず記入しましょう。

★レート設定

レートの設定は、微妙な問題です。

まず、一般的なレートを、前出のムック本などで知っておきましょう。記事によっていろいろな値が出ています。一般的な技術・実務系の翻訳では、初めてのレートとしては、英日で仕上がり400字が1000円〜1500円の範囲というところのようです。幅があるのは、分野によって、実力によって、そして翻訳会社の台所具合によって、違いがあるからです。

ただし、各翻訳会社の内情によって、どの値に設定したらいいのかは違うと思います。安く売っているところだと、翻訳者への支払いレートも安くなります。この場合、高めに設定すると、仕事があまり来ません。いずれにせよ、料金は安めの方が仕事はもらいやすくなります。しかし、最初に安く設定したレートを値上げするのは、そうとうに困難です。最終的には、自分の収入を増やしたいわけですから、あんまりレートを安く設定してしまうと、自分のクビを絞めることになります。(じつは、自分だけではなく、他の翻訳者のクビも絞めることになるんですよね)

初めてトライアルに合格したような場合には、先方の言い値でも仕方がないでしょう。ただ、調べておいた相場と比較してあまりに安い場合は、その理由などを聞いてみた方がいいでしょう。「いや〜、これが相場ですよ」と言われるようなら、なるべく早く他の受注先に乗り換える努力をすべきでしょう。

ところで、レートについては、いわゆる相場という面と、自分が暮らしていけるだけ稼げるかどうかという面があります。相場を無視してもビジネスになりませんが、自分が食えるだけ稼げるかどうかも、無視できない要素です。二足の草鞋の場合、一足目がありますから、とりあえずは食うに困らないわけですが、専業に移行していこうと考えている人は、食えるかどうかを考えて、必要なら、いろいろと工夫をしていくべきでしょう。

自分の1時間あたりの処理量を8倍すれば専業時の1日あたり処理量(最大値と考えた方が無難)、それを20倍すれば、1ヶ月あたりの最大処理量の目安になるでしょう。この1ヶ月あたりの最大処理量の7割くらいのページ数に単価をかけてみると、だいたい、1ヶ月の稼ぎになるだろうと思います。(7掛けにするのは、フル受注も困難なら、1ヶ月フルスピードで走るのもつらいからです) これを12倍すれば、今の自分のレートと速度で得られる税込み年収(最大値)です。

「専業なら1日10〜15枚は仕上げないと」という言葉をよく聞きます。1日10枚だと月に200枚、7掛けしたら140枚、これに単価として、たとえば1300円をかけてみると……182,000円にしかなりません。年収、約220万です。大企業なら、新入女子社員でも、これ以上の月給にボーナスまでもらっています。単価と処理量の両方を上げないと、家族を養うのは難しいでしょう。

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