この「講座」は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて連載されているものを、著作者の許可を得てウェブ上に転載したものです。

この「講座」内容に関連する質疑応答は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて受け付けております。

講座内容についてのご質問がある方は、どうぞ、上記会議室においでください。

1.3 経済的側面

ところで、二足の草鞋の経済的な側面、やはり気になりますよね。

巷に最近あふれている副業の本なんかを見ると、月に5万とか、10万とかを稼ぐ方法なんかが書かれていたりします。このくらい稼げるなら副業をするというニーズがあるということでしょうか。

では、月10万円を売上げるためには、どれくらい翻訳をする必要があるでしょうか。英日翻訳1枚(400字)の単価を1,500円(翻訳会社経由では、一般に、1,300円から2,000円くらいのようです)とすると、70枚弱になりますね。1ヶ月は30日だから1日平均2枚ちょっと、でも休む日も欲しいから実働20日くらいとして1日平均3.5枚……簡単そうな気がしますか? それとも、大変だと思いますか?

大変だと思った人は……二足でやっていくのはちょっと厳しいかも知れませんね。まず実力を蓄え、さらにやり方に工夫を凝らし、大幅にスピードアップを計る必要があるでしょう。

簡単だと思った人は……ちょっと待ってください。これは、あくまで「平均」です。後で詳しく書きますが、仕事は平均して入ってきてくれません。特に仕事を始めたばかりの駆け出しの頃は、仕事はとぎれとぎれにしか入ってきません。しかも、仕事が入るときには、1日10枚近いペースでやらないと納期に間に合わないことが多いようです。少なくとも、1日5枚くらいはコンスタントに仕上げられるようにしておかないと、仕事をとること自体が難しいと思います。

収入という面では、1週間で50枚とかいう仕事が、月に1回くらいずつ入れば、10万円/月近い収入(売上)を得ることができます。このくらいの仕事量なら、うまくやれば、十分に取っていくことは可能だと思います。

スピードアップのアイデアも、後で取り上げる予定ですから、お楽しみに(^^)

ところで、実際に二足の草鞋で仕事をしている人たちは、いくらぐらい稼いでいるのでしょうか。バベルやアルクなどの特集本では、翻訳者の収入に関するアンケート結果が必ず出ていますが、残念ながら、兼業と専業がごちゃまぜになっているのが普通です。ところが、翻訳の世界1998年11月増刊号のアンケート調査では、兼業と専業を個別に集計してありました。母集団が小さい(兼業11人、専業13人)ため、代表性に問題があるとは思いますが、参考にはなるでしょう。

これによると、兼業翻訳者の翻訳による収入は、年間200万円以下が多いようです。アルクの'99実務翻訳ガイドのアンケート結果とあわせてみると、おそらく、100万円以下が一番多いものと思われます。中には、二足の草鞋なのに翻訳関係で1000万円以上という猛者もいるようです。ちなみに、私ではありません(^^;) 私も、二足の草鞋としては売上が多い方だったと思うんですが、それでも1000万なんてとてもとても... まあ、1000万円というのは、専業でもごくごく一部しか達成できない収入ですから、世の中、上を見ればきりがないと考えることにしましょうね。

一方、二足の草鞋で副収入を得ると、収入が増えたという実感があるものなのでしょうか。

'99実務翻訳ガイドでは、実務翻訳以外の仕事の年収、という項目があります。ここでは、200万〜400万くらいと500万〜700万に山があるように見えます。これは、勤続年数が比較的短い常勤の人たちと、中堅以上にキャリアを積んだ人たち、ということではないかと思います。給与で500万〜700万もらっていても、社会保険だ税金だを引くと、実際に使えるお金は、400万〜500万くらいなものでしょうから、翻訳で100万の副収入があれば、はっきりと違いを感じるでしょうね。

それに、今どき、会社員でも自分でパソコンなどを購入して家や会社で使う人が多いですよね。私自身も、会社がパソコンを買ってくれなかったので、自分の机の上に個人所有のパソコンを置いてました。翻訳収入があれば、パソコンやFAXなんかは、経費として処理することが可能になってきます。ということは、所得税や住民税のことを考えれば、20%から30%引きで買うことに等しくなるというわけです。

やっぱり、二足の草鞋はこたえられない... かな

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