この「講座」は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて連載されているものを、著作者の許可を得てウェブ上に転載したものです。

この「講座」内容に関連する質疑応答は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて受け付けております。

講座内容についてのご質問がある方は、どうぞ、上記会議室においでください。

6.4 高付加価値化(続)

★版下作成

DTPも複雑なものになると専門の人に発注されることが多くなります。その後の版下作成などの行程になると、翻訳者が請け負うことはさらに少なくなります。これは、印刷という業務に関するさまざまな知識が必要となること、また、ソフトやプリンタも若干特殊なものが必要となることなどが理由です。

版下を作成して印刷機で行う印刷は、個人翻訳者がふだん行っているプリンタによる印刷とかなり趣が異なります。まず、面付け処理を行い、複数のページを1枚の大きな紙に印刷します。大きな紙に印刷するのですから、あとから裁断する必要があります。このため、裁断位置を示すトンボも出力してやらなければなりません。版下を作成する機械は、PS(PostScript)仕様であるのがふつうですから、DTPソフトもPSに対応していなければなりません。PSということは、フォントも問題となります。自分が持っているフォントと印刷屋さんが持っているフォントが違うとイメージどおりに印刷されないことがあります。

一言でいうと、生半可なことではとてもできないってことです。知識や技術の習得という面でも、ソフトウェアや機器という面でも、かなりの投資が必要となります。版下作成や印刷をメインとする人とほとんど同じだけの投資が必要です。それだけの投資をするのならば、定期的に割のいい仕事が入ることが最低限必要でしょう。

★印刷

上記のような版下を使っての印刷は大型の印刷機械が必要であり、翻訳者が片手間にできることではありません。とうぜん、専門の業者に発注されます。

でも、印刷って、少部数だととっても高くつきます。印刷工程自体のコストは非常に低いのですが(おそらく1ページ0.1円以下というレベル)、版下の作成と印刷機械へのセットのコストが高いため、印刷部数が少ないと1部あたりのコストは非常に高くなります。

それならいっそと、プリンタで必要部数を印刷してしまうこともあります。この場合は、翻訳者レベルでもなんとか対応できるでしょう。

ただこれも、トナー代が高い(通常、A4、1枚あたり3〜4円)、紙詰まりによる手間がかかるなどの問題があります。トナー代については、1枚0.5円程度と非常に安い機種もあります(京セラ、エコシスプリンタシリーズの一部機種)。ただし、EPSONやCANONと違い、本体が量販店では買えなかったり、買えても割引率が非常に悪いのがふつうです。印刷枚数が少ないなら、EPSONの新しい機種(トナー代は実売価格で計算して1枚2円くらい)のほうが総体的には安いということもあり得ます。

★製本

きちんとした製本は、専用の機械を持つ業者に発注されます。

簡易製本であれば個人が対応することは可能でしょう。製本テープによる製本でよければ、原価はテープ代だけですみます。リング製本の器具なら4,000円くらい、サーマル製本の機械でも、2〜3万円くらいで買えます。単発なら、機械を買わずにキンコーズなどでリング製本をしてもらうという方法もあります。2穴や4穴のバインダー製本の場合、手間暇をかけてもいいなら手動の穿孔機(事務用の小さいやつなど)でもやれないことはありません。大量に処理するなら、少なくとも大型の穿孔機が必要です。100枚くらい穴があけられる手動のもので10,000円くらい、数百枚に穴があけられる電動穿孔機で4〜10万円というところです。

簡易製本の一番の問題は、高く売れないってことですね。リング製本なんて、キンコーズで300円/冊でやってくれるくらいですから、高く売れないのは当然です。「ほかの仕事とセットというなら仕方がないからやる」というくらいに考えておいたほうがいいでしょう。

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