この「講座」は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて連載されているものを、著作者の許可を得てウェブ上に転載したものです。

この「講座」内容に関連する質疑応答は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて受け付けております。

講座内容についてのご質問がある方は、どうぞ、上記会議室においでください。

6.4 高付加価値化(続)

★用語集作成

大きな翻訳ジョブでは、用語集(そのジョブで統一的に使用する訳語のリスト)が必要となります。大きなジョブは複数の翻訳者が分担するため、このような用語集がないと同じ用語に対して各翻訳者が異なる訳語をあててしまい、収拾がつかなくなります。ですから、用語集を作成してから翻訳を始める必要があります。

用語集作成では、まず、翻訳を開始する前にテクニカルタームなどを原文から抽出し、いろいろと調査したり考えたりして適切な訳語をあててリストとします。用語集ができたらクライアントにいったん提出し、クライアント側で確認・承認してもらいます。

一見、これで用語集作成が終了したように見えますが、現実には、翻訳作業中および翻訳後にもいろいろと処理が必要となります。まず、抽出し忘れたテクニカルタームが、翻訳中に見つかることがあります。また、実際に翻訳してみたら、訳語が不適切だと分かることもあります。不適切な訳語が見つかったら、用語集を更新すると同時に、すでに翻訳を終了した部分の一括置換を行います。

★テクニカルライティング的なリライト

翻訳というのは、よくもわるくも原文から離れられません。もちろん、言語による文章構造の違いなどは翻訳の段階で吸収し、ターゲット言語としてすなおに読める文章とするわけです。でも、原文に書いてあることをばっさり切り落としたり、原文にない部分を大幅に補足したりした方がターゲット言語の文書としてよくなることもあります。

こうなると、もう翻訳というレベルではありません。ターゲット言語(たとえば、日本語)でマニュアルを書き起こすテクニカルライティングといったほうがよい作業になります。

ここまで翻訳者が踏み込むことはほとんどないでしょう。第一、その文書が説明している製品などを目の前にせずに想像だけでできる仕事ではないからです。想像だけでやるなら、せいぜい、訳注を詳しく書くくらいまでしかできません。

ただし、ソフトウェア製品(ベータ版のこともある)を渡されることが、マニュアルの翻訳などではときどきあると聞いています。このような場合は、セカンドマシンにソフトウェアをインストールし、動作を確認しながら訳していきます(別マシンとしないと、動作とマニュアルを見比べることがむずかしい。ベータ版の場合はインストールするだけでマシンが不安定になることもあるのでメインマシンにインストールするのは怖い)。もちろん、元マニュアルに間違いを見つけたら修正します。このように、テクニカルライティング的な要素がある程度ある翻訳というものはあります。

★DTP編集

クライアントが社外に提出する文書の場合、翻訳されたあと、DTP処理、印刷用の版下作成、印刷、製本という処理が施されます。社内文書の場合でも、DTP処理だけは行うことがよくあります。このなかで簡単なDTP編集は、翻訳と一緒に翻訳者に発注されることが比較的よくあります。

それこそ、翻訳原稿をWordまたは一太郎のファイルで納品して欲しいというだけのことで、テキストファイルをWordや一太郎に読み込んで保存すればOKという場合もあります。技術系では、単位などの上付文字(平方メートルのm2の2の部分など)や化学式の下付文字(H2Oの2の部分)の書式設定くらいをすればいいという場合もよくあります。書式設定だけといっても、数が多ければ大変です。後は表とかフローチャートとか……だんだん面倒になってきますね。

この辺りまで受注しようという気があるならば、実際にいじってみておくことをお勧めします。仕事をしたファイル(表や上付、下付文字のあるもの)をひとつ、実際に書式設定して仕上げてみるわけです。一度やってみると、どのくらい大変なのかがよく分かります。私自身は、VBマクロも併用して省力化を図っていますが、それでもいらいらすることがよくあります。

あと、こういう重いソフトをめいっぱい使うと、システムによっては頻繁にフリーズすることがあります。Windows95/98で搭載メモリが少なかったりするとよくないようです。知人で、Wordを使って大きなファイルのDTP作業をしたら1時間に一回はフリーズしてしまい、パソコン本体を何度も何度もリセットしなければならなくてまいった経験をした人もいます。私自身は、安定性を重視して、現在のメインマシンはWindowsNTにメモリ384MBとしていますが、それでもWordを使っているとごくたまにフリーズします(Wordを使わなければフリーズなんぞ、まずしません)。

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