この「講座」は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて連載されているものを、著作者の許可を得てウェブ上に転載したものです。

この「講座」内容に関連する質疑応答は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて受け付けております。

講座内容についてのご質問がある方は、どうぞ、上記会議室においでください。

5.2.1 確定申告(続き)

★住民税の普通徴収--★重要ポイント★

二足の草鞋の場合、これは★重要★なポイントです。ここの取り扱いを間違うと、副業が会社にばれるからです。

確定申告書に、「住民税の特別徴収/普通徴収」の一方を選ぶ小さな欄があります。必ず、「普通徴収」に丸をつけてください。特別徴収を選んだり、どちらにも印がない場合には、特別徴収の取り扱いとなります。

特別徴収では、所得すべてに対する住民税が勤めている会社に請求されるのです。給料が同じレベルの他の社員よりもあなたの住民税が多かったら……副収入があるということが、簡単に分かりますよね。これを普通徴収としておくと、会社給与分の住民税のみが会社に請求され、副収入分の住民税は、個人に直接請求がきます。

★青色か雑所得か

申告には、いくつかの方法があります。青色申告、白色申告などというやつです。サラリーマンが兼業で翻訳をしている場合の選択肢は、青色申告か雑所得でしょう。

雑所得の場合、いわゆる帳簿はなくてもかまいません。領収書や支払メモを集めておき、申告時に分類、合算して、表形式にでもまとめれば十分です。1枚の紙に、たとえば、以下のような表をつくるわけです。領収書のたぐいは、分類した項目ごとにまとめてクリップででも留めて、袋に入れておきます。

売上合計:xxxxx
売上内訳(源泉徴収票との対照ができれば十分)
経費合計:yyyyy
経費の内訳(資料費、通信費など、適当な費目に分類しておく)
差引所得:zzzzz

雑所得の場合、いわゆる「現金主義」による経理処理が認められます。つまり、実際にお金が動いた時点で売上なり経費なりとして処理するわけです。言ってみれば「お小遣い帳」感覚でいいのです。

これに対して、青色申告では、一定の帳簿を備えることが求められます。経理処理も、いわゆる「発生主義」が原則となります。たとえば、納品した時点で売上に計上し(売掛金になる)、実際に入金があったら、計上してあった売掛と消込する、という方法です。貸方、借方とかいう経理の仕訳上の分け方なども理解しないといけません。経理というものを理解していない人には、なかなかに敷居の高い方法です。

青色申告の利点は、なんといっても、青色申告控除があることでしょう。青色申告とするだけでも10万円、一定の要件を満たせば(貸借対照表を添付するなど)青色申告特別控除と称して、1999年現在、45万円の控除が認められています。つまり、無条件で10万円または45万円、経費が増えて、その分、所得が圧縮され、最終的には、その何十%分の税金が減るのです。あと、配偶者が仕事をしていない場合は、青色専従者給与を配偶者に支払い、経費とすることができます(ただし、配偶者控除からははずれますから、どちらが得か、よく検討する必要があります)。また、税制上の優遇措置(1999年の通称パソコン減税など)は、多くの場合、青色申告者にのみ認められます。

青色申告とするかどうかは、税金上のメリットと手間暇を天秤に掛けてどう思うか次第でしょう。仕訳が理解できる人ならば、青色申告として税金を減らすことを考えてもいいでしょう。実作業は、経理ソフトを使えばかなり軽減できます。一方、経理関係の入門書を読んでわけが分からないと思った人は、雑所得としておくほうが無難でしょう。二足の草鞋での翻訳の売上額はさほど多くないでしょうから、手間暇を省いたほうがいいことが多いだろうと思います。

なお、青色申告とするかどうかは、申告者の選択によります。青色申告は、いわゆる「事業者」としての申告なので、稼ぎが少ないと事業性がないといって否認されると言われたりしますが、基本的にそういうことはありません。税務署に問い合わせてみましたが、「本人が事業であると思えば事業である」との回答が返ってきました。万一、「稼ぎが少ない」と言われたら、「事業の開始時に規模が小さいのは当たり前。これから大きくしていくんだ」と胸を張って言えばいいでしょう。

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