この「講座」は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて連載されているものを、著作者の許可を得てウェブ上に転載したものです。

この「講座」内容に関連する質疑応答は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて受け付けております。

講座内容についてのご質問がある方は、どうぞ、上記会議室においでください。

5.2 確定申告

サラリーマンのほとんどは確定申告と無縁です。でも、二足の草鞋を履くなら、確定申告は避けて通れません。

★確定申告をしなければならない場合

サラリーマン(正確には給与所得者)は、20万円以上の副収入を得た場合、確定申告をしなければなりません。この収入は売上から経費を引いた差額を指しますから、たとえば、副収入で100万円の売上があっても、必要経費が85万円かかっていたなら、確定申告をしなくてもいいことになります。ただし、実利的な面(源泉徴収税の還付)やリスク管理(住民税などの徴収により勤め先に二足がばれる危険を回避)などの面から、たとえ少額であっても面倒くさがらずに申告されることをお勧めします。

★源泉税の還付

個人翻訳者に対する翻訳報酬が支払われる際、その10%(1ヶ月の支払いが100万円を超える場合は、超えた部分については20%となる)が源泉税として翻訳会社などから国庫に収められます。二足の草鞋の最終的な所得税は、売上から必要経費を引いた所得を他の所得(二足の草鞋なら給与所得がありますね)と合算し、その合計に対して所得税率をかけて算出します。翻訳報酬と給与で予め収めてある源泉税の合計よりも最終的な所得税の方が少なければ、還付といって差額が戻ってきます。もちろん、最終的な所得税の方が多ければ、不足分を支払う必要があります。

サラリーマンとして給与所得があると、所得税の税率が高めとなります。20%の人が多いと思いますし、30%のブラケットに入る人もいることでしょう。このため、還付を受けるのがけっこう難しいのは事実です。

ただし、還付とならないなら申告しない方が得ということにはなりません。還付にならないからと申告しないのは、立派な脱税行為です。あとから税務署に見つけられると加算税なども課されますし、最悪、起訴されて前科がつくということだってないとは言えません。誰にどの程度の翻訳収入があるかは、翻訳会社などが税務署に提出する源泉徴収票によって、税務署はすべて把握しているのです。年間売上が20万円や30万円ならば問題にはされないでしょうが(上記の副収入20万円未満に該当する可能性が高いため)、これが数十万以上にもなると、税務署の調査が入る危険性は高いと思われます。

ちなみに還付を受けるためには、大ざっぱにいって、所得税率が20%の人は経費率50%以上、30%の人は経費率67%以上でなければなりません。専業で1人前稼いでいる人は経費率が50%なんて高い値になるはずがないし、そんな値では税務署が認めるはずがないと思うかもしれません。でも、サラリーマンとの兼業や主婦業との兼業で配偶者控除内に収まるように仕事をしている場合のように売上額が小さい場合は、経費率がかなり高くなってもおかしくないのです。たくさんの仕事をする場合でも少しだけする場合でも必要なもの(たとえば、パソコンや辞書)がありますからね。

ちなみに経費となる主なものは……仕事に使うパソコンは経費ですし(金額によっては固定資産として減価償却する必要がある)、書籍類も経費です。自宅に戻って仕事をするなら、光熱費やアパート代の一部も経費です(生活費と按分する)。私のように喫茶店で仕事をするなら、コーヒー代も経費になります。だって、仕事場所を確保するために必要なお金ですから。勉強会や情報交換のために出席した翻訳フォーラムのオフの費用も、交通費を含めて経費になります。新聞も、ある程度の割合は経費にできます。切手代やコピー代とかも必要ですね。みんな、領収書をもらっておいて、経費にします。領収書のもらえないもの(電車の切符やコイン式コピー機によるコピー代など)は、いつ、どこに、なんのために、いくら支払ったのかをメモしておけば経費として認められます。このようにこまめに積み上げていけば、けっこう、高い経費率になるはずです。

めんどくさいですか? もちろん、面倒なら領収書もなにももらわず、申告時に細かい書類も作らずに申告することは可能です。そのかわり、売上=収入とみなされてしまい、税金を多く支払うことになります。経費の取り扱いをすれば払わずにすんだはずの税金は、所得税が20%の所得範囲なら住民税も含めて経費の30〜35%、所得税が30%だったりすると経費の43%にも達するわけです(翌年に課税される住民税も考慮した数字)。経費が年間50万円だったとすると、余分に払わなければならない税金は15万円から20万円あまりにもなります。どちらを選ぶのも自由なんですが、私なら、経費をつける方を選びますね。

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