この「講座」は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて連載されているものを、著作者の許可を得てウェブ上に転載したものです。

この「講座」内容に関連する質疑応答は、@nifty「翻訳フォーラム・アドバンスメント館(FTRAN2)」の第13会議室「翻訳JOB応援会議室」にて受け付けております。

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3.10 納期の問題

納期の問題も、二足、専業を問わず、大きな問題です。特に二足の場合、3.1 一足目との両立でも書いたように、予定外のナニゴトカが一足目で飛び込むこともあります。納期に余裕を持っておきたい... でも、短期で仕事を上げられた方が、受注もしやすい... もともと二足で処理量は少な目なんだし... というわけで、納期に余裕を持って仕事をするのは、なかなかできることではありません。

★納期の種類

納期っていうのは、納める時なんだから、納期に種類なんかあるはずないじゃないか、と思われるかも知れません。でも、これがあるんです。

一番大事なのは、客先納期。お客さんに翻訳会社が訳文を提出する期日です。この納期から、翻訳会社での後処理分の日数を早めた時期が、我々翻訳者に提示される納期です。

翻訳会社では、

  1. 訳抜けチェック
  2. リライト
  3. DTP
  4. 印刷・製本

などの処理を行います。1くらいは、まずほとんどのところで行っているはずです。2も行っているところが多いはずですが、たまに、行っていないところがあるようです(リライトなしというのは大胆だと思うんですが、これをやらずに安値勝負というところも現実にあるようです)。3と4は、クライアントからの要求があれば行う、というのが普通です。クライアントから赤の入った原稿を返してもらい、その打ち込みを行う場合もあるようです。

翻訳会社では、上記の処理に必要な日数を見積もらなければなりません。基本的にx日、という形で社内ルールが決まっていて、後は、ケースバイケースで調整する、というのが普通でしょう。つまり、普通にやって8割のケースはカバーできる後処理時間を経験的に求めて確保しておく、なにがしかの理由で、これが長い or 短いと思われる場合には、その分、増減させるわけです。

普通よりも長い、短いは、たとえば、

などによって決まります。

仕事の量が多い場合、分割納品していけば、最終部分の納期を遅くすることも可能です。ただし、後ろを訳したら前の部分の不明点が判明した、とか、間違いがあったことに気づいた、ということもけっこうあります。分割納品では、こういう場合に修正ができない(少なくともやりにくい)のが厳しいですね。

翻訳者の質によっても、後工程に要する時間は大きく異なります。「あなたなら、もう2日、遅くても大丈夫です」と言ってもらえるようになれば、もう、売れっ子の1人になったといえるでしょう。最終的には、このレベルを目指すにしても、最初からは難しいですね。じゃあ、提示された納期は絶対なのか... そうでもなかったりします。あなたが、上位5割に入っていれば、8割がカバーできるだけの時間は不要でしょう。1日くらいは、なんとかしてもらえる可能性があります。後処理側で「頑張れば何とかなる」という範囲で、もう半日や1日、もらえる場合もあります。

ともかく、納期的に無理がある、と思ったら、正直に相談してみることが一番です。相談せずに納期を飛ばすのは最悪です。もちろん、できるときには、提示された納期でキチンと仕上げましょうね。

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